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Story


株式会社T.W.C コロコロブラシのストーリー
     『「発明家」富山秀夫(敬称略)のクレイジージャーニー』



「クレイジー」という言葉を耳にすると普通はネガティブなイメージだろう。
しかし、若者の間では、「クレイジー」は「超カッコイイ!」という意味で使われる。



「クレイジー」なやつとは、「振り切ったやつ」、つまり、何かに没頭し、突き詰め、
そしてやりきったやつ、ということだ。
そう、「やりきったやつ」は「超カッコイイ!」ではないか!

ここに登場する『発明家』富山秀夫は、まさに「超カッコイイオッサン」である。
そして、やりきったやつ、がクレイジーと言ったが、
富山秀夫はまだやりきった、と思っていない。
まだ、クレイジーな旅の途中だ、と考えている。
まさに、クレイジージャーニーの真っ只中なのである。




富山秀夫が20歳のころ。
この若さで彼は歯槽膿漏を患っていた。
歯磨きするたびに出血し、歯もぐらぐら。
歯のケアをしてこなかったわけではない。人並みにちゃんとケアはしていたはず。
歯茎のマッサージがいい、と歯医者から言われ、歯ブラシで入念にマッサージしてもいた。
でも、味噌汁に入っているわかめすら噛み切れない。
硬い食べ物なんて、ずいぶん長い間食べていない。

そこで、富山秀夫は思う。
「もうええわ!」と。
歯のケアを投げ出したのではない。
「歯磨きだって、歯茎のマッサージだって、ちゃんとやってるのに、いっこうに良くならないのは、
 世の中にある歯ブラシが俺にあってないからや。もうええわ、人には頼らん。俺が作る」
と、『発明家』がここに生まれ、そして、クレイジージャーニーに飛び込んだのである。

どんなカタチがいいのか、
どんな毛がいいのか、
どれくらいの力が加わればよいのか、考え、自分が実験台となった。
富山秀夫は歯が悪いだけではなかった。あきらめも悪かった。

20年あまりの歳月を要し、「コロコロブラシ」の原型が出来上がる。
それまでの試作品は数百本と富山秀夫は笑う。
この「コロコロブラシ」の原型となった歯ブラシこそが、
長年富山秀夫を悩ませてきた歯槽膿漏との決別の始まりだったのである。
1週間でそれまでの試作とは違う実感に歯ごたえ、いや手ごたえを感じ、
続けていくことで歯槽膿漏がさらに快方に向かうことを実感する。

しかし、富山秀夫のクレイジージャーニーは終わらない。
「俺みたいに悩んでいる人はたくさんいるはずだ。ならば、この「コロコロ」を製品化しよう」
と。
そして自ら製造した歯ブラシでケアを続け、68歳の今、
奥歯は抜けていったが、しっかり20本の歯が残っている。
そして、硬い食べ物もしっかり噛んで食べることができる。




コロコロブラシの製造は手作り、である。
大阪府吹田市の町で、一つ一つ、丸いブラシを作って、歯ブラシとジョイントさせ、商品にしている。
私が見た製造現場は、まさに「工房」だった。
そこに富山秀夫が座っている。
コロコロブラシのまさに心臓部、ブラシ部分を製造する機械は富山秀夫の手作りである。
歯ブラシが手作り、というだけではない。機械も手作りなのである。
『発明家』富山秀夫は言う。
「この機械のここは誰も真似できないね。」
「ブラシの毛の1本1本は柔らかくてしなやかだ。普通にローラー状にしたって、やっぱり柔らかいままだ。
 この機械で、ここがこうなる(この辺、企業秘密。)から、ブラシの毛が適度な張りを持ちつつ、
 しなやかなままなのよ。あ、そうよそう、この毛もこだわりがあってね・・・」
止まらない。

コロコロ歯ブラシの訴求ポイントとか、こういうところがいい、とあまり言わない。
コロコロ歯ブラシを作る機械について、語る。

富山秀夫は「コロコロブラシ」は「良いモノ」だ、とわかりきっている。
だから、「良いモノ」を生む機械を語る。
そして、機械を指差して言い放つ。
「まだ、改良するよ、ココとココ。」
機械を改良すること、それは生産性を上げる、ということを意味していない。
コロコロブラシをまだまだ改良する、ということを意味している。

『発明家』富山秀夫のクレイジージャーニーは、まだ、終わらない。





工房の国、大阪
 大阪府の製造業の従業者4〜29人の事業所数は13,293事業所。
 全国47都道府県では1位。全国平均約3,122に比べ、大幅に多い。
 ちなみに、同資料で、東京は9,442事業所。
 1事業所あたりの従業員数の全国平均は11.89人で、
 大阪は11.25人、東京は10.44人。そもそも4〜29人の事業所なので、
 全国とも各都道府県とも大きな差はでないが、
 いわゆる小さな製造業の事業所の従業員総数は、
 大阪149,524人、東京98,575人と、差が出てくる。
 人口比から言っても、「小さな工場で働く人」が多い、ということがわかる。

 まさに、大阪はT.W.Cのような工房の国、なのである。


(引用資料:平成29年確報 地域別統計表/「従業者4〜29人の事業所に関する統計表」掲載サイト)
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/result-2/h29/kakuho/chiiki/index.html

「オッサン」に敬礼!
 大阪でいう「オッサン」はただの中年男性のことを指す場合もあるが、
 愛情をこめて「オッサン」と言うと、ポジティブな意味を持つ。
 リスペクトに値する、人生の先輩、という意味を持つ。
 尊敬する大先輩を「オヤジ」と呼ぶのと同義である。
 ここでいう「オッサン」は間違いなく、後者である。